知識も大事だが経験の方がもっと大事だという時に「人間は経験した範囲内でしか理解して行動できない」という言葉を聞いて、漠然とそうだなあと思ってきた。日常の行動や判断ではベースとなる知識はもちろん大事だが、経験がなければなかなか的確な行動や判断を為し得ない場面に何度も遭遇してきたからだ。
この意味からもロールプレイングでの疑似体験が有効であり、研修の中では一方的な講義だけにならないように、可能な限り、ロールプレイングを組み込んで行ってきている。
しかし、このことは仕事の場面だけでなく、いやそれ以上に日常生活では言えるようだ。家庭内で家事を少しずつ分担し、また、手伝うことが増えてくるにつけて、毎回それを感じ続けてきている。
今日は朝から妻がカーテンを洗う計画を立てている。梅雨から夏への切り替わりが急すぎて洗い損ねたからである。
暑いさなかに全てを彼女にさせるのは大変と少し手伝うことにした。先ずはカーテンをカーテンボックス内のレールから外す作業だ。留め具がカーテンレールからなかなか外れない。特に一番端の動かない留め具から外すのはそれはもう大変だ。
四苦八苦して外した後、そのことを妻に話すと、「そうなのよ。でも取り付ける時の方がもっと大変なのよ」とのこと。高々カーテンの付け外しでもこんなことだから、家事の一つ一つには我々男族には気づかない作業の難しさとそれを一見楽々とこなしている妻族の経験と知恵が生きている。
「人間は経験した範囲内でしか理解できない」、こんな崇高そうな言葉は我々の生活のあちこちに散らばっていそうだ。